今回は「陰茎反転法膣形成術」についてお話しします。これは男性型の性器外観を、女性型の性器外観に変更する施術です。「性別適合手術」のひとつに位置づけられますが、MTFの場合にはまさに“本丸”というべき施術だといえます。
この施術は非常に複雑で難しく、日本では対応できる病院が限られています。「性同一性障害(1)」でも触れたように、大学病院でコンスタントに施術を実施しているのは岡山大学病院だけになっており、大学病院以外のクリニックでもあまり行われていないのです。そのためタイ等の国外で施術を受けるケースが少なくありません。しかし施術後の対応まで考えれば、日本国内で対応できる病院やクリニックを増やしていくべきだと私は考えています。
それでは具体的に、この施術ではどのようなことを行うのでしょうか。施術内容は以下の通りです。
1.まず陰嚢と肛門の間に、膣となるべき空間を作成します。
2.陰嚢内の睾丸を摘出し、陰茎の皮膚を剥がします。
3.丸裸になった陰茎を、陰茎海綿体と尿道海綿体に分けます。
4.陰核として使用するため、陰茎海綿体の一部のうち、亀頭を1/3程度残します。また尿道として使用するため、尿道海綿体も短く残します。残りの海綿体は根元で切断します。
5.膣となるべき空間に、反転させた陰茎の皮膚と陰嚢の皮膚を使用して、膣を形成します。
6.陰嚢等の組織を転用し、小陰唇などの外性器を形成します。
かなり複雑な施術であることがおわかりいただけると思います。本当は図解してご説明したかったのですが、図を作るのが意外と難しかったため、今回は断念しました。お許しください。
施術時間は約3時間。全身麻酔、あるいは硬膜外麻酔で施術を行います。施術後、感染症や患部の裂傷、膣狭小、直腸膣瘻といった合併症が発生するリスクがあります。しかしこの施術をおこなうことで、以下の効果を得ることができます。
1.感覚のある陰核
2.新たに形成された尿道
3.陰核形成
4.大陰唇、小陰唇形成
5.12〜15cmの新たに形成された膣(通常の女性の膣の深さは8〜9cm)
施術のための要件としては、18歳以上であること(ただし20歳以下の患者さまは保護者の承諾が必要)、精神科医によって性同一性障害の診断がなされていること、最低1年間のホルモン療法を経ていることが必要です。これらは日本精神神経学会の『ガイドライン』に定められています。
しかし長期間のホルモン療法の後は、この施術が難しい場合もあります。ホルモン療法を行うとペニスが縮小することが多いため、膣形成に必要な皮膚が確保できないことがあるからです。
長さ5〜15cm程度の標準的なペニスの場合、上記のように、陰茎と陰嚢の皮膚を用いた陰茎反転法膣形成術が適用できます。これ以上長いペニスの場合には、陰茎の皮膚だけでも膣形成できます。これに対して5cm以下のペニスの場合には、陰茎と陰嚢の皮膚だけでは膣形成ができません。この時にはS字結腸を用いて足りない皮膚を補うことになります。もちろんこの施術は、一般的な陰茎反転法膣形成術に比べて、さらに大がかりになります。
日本精神神経学会の『ガイドライン』は、無理のない性別適合を行う上で重要な意味を持っていますが、実際の施術現場の立場で見ると、なかなか難しい側面があることも否定できません。前述のように、陰茎反転法膣形成術を行うには1年以上のホルモン療法が必須条件になりますが、もし女性器への変更を強く決意されているのであれば、ホルモン療法の期間を最小限にし、ペニスの縮小が進行する前に施術した方がいいのではないかと思います。
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