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プロフィール

ドクターコムロ

Author:ドクターコムロ
(小室好一)
コムロ美容外科総院長。消化器外科・乳腺外科・形成外科・麻酔科を専攻し、数多くのオペを執刀。特に乳癌摘出術や、乳房再建術に関しては、高い実績を残している。その後、1991年にコムロ美容外科を設立。美容整形の“手術革命”をもたらした「コムロ式」オペの研究開発を積極的に進めると共に、数多くの医師を指導・育成してきた。またテレビ・ラジオ等では美容相談医として活躍。著書も多数執筆している。
医学博士・日本美容外科学会正会員・日本外科学会正会員・日本麻酔科学会正会員・日本超音波医学会正会員・米国アンチエイジング認定医


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性同一性障害(1)

 今回からしばらくの間「性同一性障害」についてお話ししたいと思います。コムロ美容外科グループでは今年に入ってから、診療メニューに「性同一性障害」への対応を追加しているのですが、このキーワードでホームページにたどり着く方や、相談に乗って欲しいという方が増えているからです。

 性同一性障害とは、「生物学的には完全に正常であり、しかも自分の肉体がどちらの性に所属しているかをはっきりと認識していながら、その反面で、人格的には自分が別の性に属していると確信している状態」を指します。これは日本精神神経学会による定義ですが、簡単にいってしまえば「心の性と身体の性が食い違った状態」ということです。

 このような障害は、男性にも女性にも起こりえます。身体は男性で心が女性の人をMTF(Male to Female)、逆に身体は女性で心が男性の人をFTM(Female to Male)と呼びます。また両者を合わせてG.I.D(Gender Identity Disorder)と呼びます。これを日本語訳したのが「性同一性障害」です。

 一般に「自分のことを男と思っているのか、女と思っているのか」という自己イメージのことを、性自認といいます。性自認が身体的な性と異なっていても、本人がそれで苦しんでいない場合には、性同一性障害とはいいません。あくまでも性自認と身体的な性が食い違うことで、本人が苦しんでいるケースを性同一性障害といいます。

 例えばMTFの場合、女性の格好ができればいいという方や、乳房は欲しいがペニス切断まではしなくていいという方も少なくありませんが、このような方は性同一性障害とはいいません。ちなみにFTMの場合はMTFとは異なり、性同一性障害までには至らない中間的な状態は、あまり見られないようです。

 性同一性障害の方は、性自認に反する身体的性別を持っていることに不快を感じ、MTFの場合にはペニス切断願望や乳房願望、FTMの場合にはペニス願望や乳房除去願望などが生じます。米国のデータによれば、性同一性障害と見なされる人の割合は、MTFは3万人に1人、FTMは5万に1人だと言われています。また日本国内では5000〜1万人の方が性同一性障害だと言われています。

 MTFの方は、幼少時から女の子の服装をしたいと思い、成長するにつれて陰茎などの存在が我慢できずに苦しむケースが多く、FTMの方は、幼少期からスカートや人形に興味を示さず、月経や胸の膨らみなどの身体の変化を嫌悪することが多いようです。このような自分の性に対する違和感・嫌悪感は、親の育て方では変わらないことがわかっています。脳には生まれついての性差があり、胎児期に脳が形成される際の男性ホルモンの量などによって「男の脳」「女の脳」に分かれるからです。いったん決まった「脳の性」は、思春期の性ホルモン分泌の変化にも影響を受けません。すでに胎児期に決まってしまった「心の性」を、身体の性に合わせるのは無理があるのです。

 そこで重要になるのが、身体的な治療です。つまり「身体の性」を「心の性」に合致させるのです。性同一性障害の診断・治療に関しては、1997年に日本精神神経学会が『性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン』を定めており、2006年にその第3版が出ています。これによれば、治療は3段階で行うことになっています。

 まず第1段階は精神療法です。精神科医が患者さまの生活歴や性認識を聞き、身体への違和感が続いていることを確認します。2人の精神科医の意見が一致すれば、診断は確定します。

 第2段階はホルモン療法です。MTFの方には女性ホルモン、FTMの方には男性ホルモンを投与し、身体的な性を性自認に一致させていきます。

 そして第3段階が性別適合手術です。これは以前は「性転換手術」と呼ばれていたものですが、学会の指針によって現在の名称に改められました。1998年には埼玉医大で初めて、大学倫理委員会の承認を得た性別適合手術が行われています。

 日本に性同一性障害の患者さまにとって、最大の問題は国内で性別適合手術に対応できる病院が少ないということでしょう。Wikipediaによれば、2006年7月の時点で手術実績がある大学病院は、埼玉医科大学、岡山大学、関西医科大学、大阪医科大学、札幌医科大学の5ヶ所しかなく、その後、埼玉医科大学と関西医科大学、大阪医科大学では手術が行われなくなっており、コンスタントに性別適合手術を行っているのは岡山大学病院だけになっています。もちろん大学以外のクリニックでも、学会の指針に従えば施術は可能なのですが、国内ではあまり行われていません。その最大の理由は「施術が極めて難しい」からです。

 国内で施術を受けられない方のほとんどは、タイなどの海外で施術を受けています。私は2000年頃から、このような状況には問題があると感じてきました。今年から診察メニューに加えたのも、国内で施術を受けられる人を増やしたいと考えたからです。またタイのドクターに「タイで手術を受けた患者さんのアフターケアができる日本の病院を紹介して欲しい」と言われたことも、診療に踏み切るきっかけになりました。タイで行った施術のアフターケアを日本でするのであれば、最初から日本で施術を実施し、アフターケアまで一貫した対応を行った方がいいのです。

 それでは実際の治療は、どのようなものなのでしょうか。次回はホルモン療法について説明したいと思います。



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